ルアーのコーティング剤として使われる代表的なものとしては、セルロースセメント、ウレタン、エポキシの3種類でしょう。長年ルアー製作をしているので、色々と試しては来ましたが、私の場合はエポキシとの相性がよく、早い段階でエポキシ派に落ち着きました。

それぞれに特徴やメリット、デメリットがありますので、私の体験談から共有させて頂きます。



セルロースセメント、ウレタン、エポキシ、それぞれの特徴とメリット・デメリット



セルロースセメント



乾燥により硬化するコーティング剤で、基本どぶ漬けして使うタイプです。

一回の塗膜が薄く、重ね塗りの場合、下のコーティング層を溶かして固まるので、繰り返しのコーティングで薄くて硬いコーティング膜ができます。有機溶剤の性質が塗装面も溶かしてしまうほど強いので、色流れ対策は必須です。また、臭いは強烈です。


セルロースセメントのメリット


  1. 比較的安価
  2. 乾燥(硬化)が早い(2~3時間)
  3. 厚ぼったくならない
  4. 薄く締まりのある硬いコーティングに仕上がる
  5. うすめ液で薄めることができる
  6. ブランクの木目に浸み込ませてベースの強度アップに使える


セルロースセメントのデメリット


  1. とにかく臭いが強烈(要防毒マスクレベル)
  2. 塗装面を溶かす(色流れする)
  3. 湿度などの影響で白濁(白かぶり)することがある
  4. 何度も重ねる必要あり(10~30回)
  5. 最後まで使いきれずに固まる
  6. 大型ルアーのコーティングには不向き


上記の特徴を踏まえた向き不向き


セルロースセメントは、トラウト用ミノーやバス用のクランクベイト等、淡水系のウッド製小型ルアーのコーティングに向いています。

色流れ対策は必須で、塗装面にそのままコーティングすると100%の確率で塗装を溶かしてしまいます。なので、市販ルアーのコーティングには使わない方が無難です。


セルロースセメントの色流れ対策


セルロースセメントの色流れ対策として、下記の方法が挙げられます。


  1. 薄めたセルロースセメントをエアブラシで極薄く吹く(を数回繰り返す)
  2. 木工用ボンドを薄く塗る(強度と透明度に不安あり)
  3. クリアラッカーを薄く吹く(を数回繰り返す)
  4. セルロースセメントスプレーを極薄く吹く(を数回繰り返す)


どれも結構面倒くさいですが、セルロースセメントを使うなら必須作業です。

一番手っ取り早いのは、3と4のスプレーでしょう。ただし、スプレーでも一気にたくさん吹きかけると色流れするので要注意です。





ウレタン



1液タイプと2液混合タイプ、あとスプレータイプがあり、ルアーコーティングにおいては1液ウレタンのどぶ漬けが多く使われています。

1液タイプは空気中の水分に反応して硬化するため、湿気が多い日や雨の日の使用は推奨されません。(容器内のウレタンが硬化してしまったり、作業中に硬化が始まってしまい綺麗に仕上がらない)また、保管状態や保管場所により残り半分くらいで固まってしまうこともあります。

2液混合タイプは少し高価になりますが、化学反応による硬化なので天候に左右されず自然硬化しにくいです。しかし、硬化後の硬度が少しやわらかいものが多く、ルアーメイキングには不向きかもしれません(カチカチにならない)。

スプレータイプはコーティング膜が薄く硬度も低いので、色止め(色流れ防止)として使ったり、市販ルアーの塗装面の保護程度の使用が向いています。


ウレタンのメリット


  1. どぶ漬けできる
  2. 比較的安価
  3. 厚塗りできる
  4. アルミやホログラムシールと相性が良い
  5. セルロースセメントより色流れしにくい
  6. セルロースセメントほど臭いがキツくない


ウレタンのデメリット


  1. 硬化時間が長い
  2. 色流れ対策は必要
  3. 重ね塗りには毎度足付けが必要
  4. 作業日が天候や湿度に左右される
  5. 最後まで使いきれない
  6. 黄変しやすい
  7. それなりに臭う(シンナー臭)
  8. 大型ルアーのコーティングには不向き


上記の特徴を踏まえた向き不向き


ウレタンは、市販ルアーのコーティング、特にメタルジグやシンキングペンシルなどのどぶ漬けコーティングに向いています。

もちろん、ハンドメイドルアーにも使えますが、コスパが悪い点(最後まで使い切れない点)と天候や湿度によって作業ができないという点であまりオススメできません。

悪天候で釣りに行けない日にルアー製作もできないのは辛いですよね...。


ウレタンの色流れ対策


ウレタンも塗料との相性により色流れするので、使用前に色流れしないかのチェックと色流れ対策は必要です。

ウレタンもセルロース同様に、薄くスプレーするのが手っ取り早いかと思います。




エポキシ樹脂



いわゆるエポキシレジン。主剤と硬化剤を混合して化学反応で硬化する、2液混合タイプのコーティング剤です。

透明度が高く、硬くて美しいコーティングに仕上がりますが、取り扱いがデリケートで、混合比(体積比や質量比)を少し間違えるだけで硬化不良を起こしてしまいます。また、気温や湿度により硬化時間や硬化品質にも影響し、白濁したり、ひけ、はじきが発生したり、アミンブラッシングという硬化不良が起こったりもします。基本的に、気温が低いと硬化時間が長くなります。

種類も多く、昨今のDIYブームにより粗悪品も多く流通しているので注意が必要。硬化剤のタイプもスローやファースト等、ものによって硬化時間が異なるため、目的に応じた選択と使い分けが必要です。ルアーコーティングに使うなら、硬化剤はファーストタイプ(硬化時間3時間~12時間程度のもの)が適していますが、ファーストタイプはあまり流通していません。


エポキシのメリット


  1. 透明度が高い
  2. 硬くて高級感ある仕上がりになる
  3. ほぼ無臭
  4. 色流れしにくい
  5. 必要な量だけ混合して使える
  6. 最後まで使いきれる
  7. ものよっては一度に厚塗りができる


エポキシのデメリット


  1. 硬化時間が長い(硬化剤タイプによる)
  2. 高品質のエポキシは高価
  3. 混合比がシビア
  4. 種類が多く迷う(ルアーコーティングに使えるものは限られている)
  5. 原因不明の硬化不良やヒケ、ハジキが発生することがある
  6. 回転モーターがあった方がいい(なくても可)


上記の特徴を踏まえた向き不向き


エポキシはオールマイティー使えますが、小さなルアーのコーティングには不向きかと思います。コーティングが厚ぼったくなるため、小さなルアーだとルアー形状やバランスにも影響が出ます。

基本的に、中~大型ルアーのコーティングには最適です。

また、塩分にも強いので、ソルトルアーであればエポキシ一択かと思います。


エポキシの色流れ対策


エポキシはほぼ色流れしないので、色止めは不要かと思います。ただし、硬化時間の長いエポキシやエポキシの種類によっては色流れする恐れもありますので、目立たない場所でチェックするか、不要なルアーなどで一度試してから使うと良いです。



その他、ルアーコーティングに使えそうな塗料など



UVレジン


UVライトで硬化し、手軽で硬化も早いので良さげなんですが、やはり強度的には弱く、爪で強く押さえると爪痕がつきます。

また、硬化不良やベタツキも発生しやすいので、本格的なルアーメイキングには不向きです。

市販ルアーのコーティングには良いかもしれません。


マニキュア・ネイル用トップコート


こちらも強度は期待できません。

また、シンナー系の有機溶剤が強く、塗装を溶かしてしまうものも多いです。

基本的にはコーティングとしては使えないと思ってよいと思います。



コーティング剤の購入方法について


セルロースセメントやウレタンはルアーコーティング専用の物が多く流通しており、ホームセンターや大型釣具店でも取り扱っていますので、手軽に入手可能です。

もちろん、Amazonなどネットでも購入できます。


しかし、エポキシはルアーコーティング専用としてはあまり流通していません。

釣具店に置いているエポキシはロッドビルド用の物がほとんどで、少量かつ高価です。

そもそも、ロッド用のエポキシはルアーコーティングにあまり向いていません。

Amazonや楽天などネットで検索すると、多くのエポキシレジンがヒットしますが、大半はアクセサリーやレジンアート作品用のもので、硬化時間が長くルアーコーティングに不向きなものがほとんどです。中には粗悪品(硬化不良が頻発する)も多いのでくれぐれもご注意ください。


アマゾンでも買えるウォータークリアレジンについて


Amazonや楽天ショップで販売されているエポキシレジンで、唯一、ルアーコーティングに使えそうなエポキシは、上記リンクでも紹介しましたこの 造形ラボ社のウォータークリアエポキシレジンくらいかと思います。(硬化時間 3~4時間と最速クラス)


ただし!この硬化時間は使用環境によってかなりブレがあります。



私も時々使っており、かなりいい感じにコーティングはできるのですが、3~4時間では全く硬化完了せず、垂れないくらいにトロっと固まる程度。触ってもベタつかない状態になるまでは丸一日かかります。

※造形ラボさんに直接問い合わせてみたところ、室温25度以上で、ある程度のボリューム(量と厚み)を伴わないと、硬化が促進されないとのこと。基本的にはレジンアート作品用ですので、ルーコーティングのように少量使いでは、硬化時間が長くなり、また、季節によっては25度を下回るので、さらに硬化時間が長くなってしまうようです。また、混合時に温度を上げれば多少硬化が促進されるとのことで、なんとこのウォータークリアレジンに限っては、60度まで温度を上げても大丈夫とのことです。

ということで、さっそく試しに30度~40度に温めて混合し、塗布後にしばらくヒーターの前でぶら下げて放置してみましたが、やはり4時間程度では全く硬化しませんでした。5時間でトロミがつく程度。結局カチカチになるには24時間ほどかかりました。

使用感としては、超低粘度サラサラタイプで薄く均一にまとわりつく感じで、ハジキやヒケは発生しにくい印象です。

気泡や塗りムラも発生しにくく、カチッと薄く締まった仕上がりになるので、小さなルアーのコーティングにも使えそうです。薄く塗り重ねれば良い感じに仕上がります。

また、別のエポキシ(C15エポキシ等)の上から仕上げに薄くこのウォータークリアレジンを塗ると、高透明で美しい光沢が得られ、締まりが出てきれいに仕上がります。

ルアーコーティングのように少量で使用する場合、混合後、硬化開始するまで(トロミがつくまで)に3~5時間ほどかかる(真冬だともっとかかる)ので、一度に厚塗りする場合は、前工程(塗装やホログラム貼り等)から事前にエポキシを混合撹拌しておくと、ちょうどいい具合に粘度が高まり厚塗りもできて効率が良いかと思います。

また、塗料によっては若干色が流れることがありますが、台無しになるほどではなく、筆にうっすら色味が移る程度です。

造形ラボさんのエポキシは種類が沢山あり、それぞれ硬化時間や硬度、透明度などの特性が異なりますので、購入の際はくれぐれもご注意ください。

そもそも、コーティング用には作られていないと思いますので、あまり期待はしない方が良いです。

エポキシは扱いが難しそうに感じますが、高品質のエポキシは多少混合比を誤っても綺麗に硬化してくれます。

良質のエポキシの選別、見極めは難しいですが、下記のような数少ない専門ショップもありますので、確実に高品質なエポキシを購入されたい場合は、少し高価ではありますが、専門ショップから購入されることをおすすめします。


↓こちらのシルバーチップエポキシ C15エポキシ がおすすめです。得にC15は5時間程度で触っても大丈夫なくらい硬化します。(ただし、はじきやひけが発生しやすく、慣れない内は扱いが難しいかもです。)


最後に


コーティング剤は、どれも有機溶剤系の有害成分が含まれている為、換気は必須です。また、火気は厳禁です!

小さなお子様の手の届かない場所に保管し、取り扱いには十分に注意して、安全にルアーメイキングを楽しみましょう。