ちょっと重ための長文でスミマセン!
実は先日、自分の過信と不注意により釣りの最中に水難事故に合ってしまい、危うく命を落とすところでした。
一度は心肺停止にまで陥ったものの、幸運に幸運が重なり、特に障害や後遺症もなく、今は奇跡的にほぼ全快しております。
まさか自分が!?と思うことが現実に起きてしまいました。
釣り人として、また、幼い子を持つ親として最悪で恥ずかしいことで、わざわざここで書くのもどうかなと思いましたが、このまま何事もなかったようにしれ~っと過ごすのも気持ち悪いし、自分への戒めと記録、そして皆さんにも釣りやレジャー等の際の安全のことや、ライフジャケット着用の重要性などについて改めて考えてもらうきっかけになればと思い勝手ながら報告させて頂きます。

当日は1月の後半。
 
その日は黒潮がかなり接岸しており、海況図では20度帯がかなり北まで入り込んでいたので、これは釣れる!と期待し、気合いを入れての釣行でした。いつものようにハンドメイドのルアーを試すべく早朝から一人、南紀のメジャーな地磯に歩いて渡り、ルアーフィッシングを楽しんでいました。
そこは南紀の地磯にしては比較的足場が良く、当日は風もなくて真冬の磯にしてはかなり穏やかな海況に見えたのですが、少しウネリが入っており、上げ潮も重なり、思い返せば危険な状況だったかと思います。
しっかり海を観察しておけば防げた事故かもしれませんが、「気持ち良い釣り日和だ」くらいののんびりした気持ちで、何も考えず釣りしてました。

また、魚の活性が高く、ハマチやメジロが元気よくルアーを追い、開始早々に釣果も上がり、アドレナリン全開で注意も散漫になっていました。

当日上げたハマチは60cm程度でしたが、サイズの割に良く引き、根際に潜る傾向があり取り込みに苦戦しました。

ところどころにいい感じのサラシも出来ており、あわよくばヒラスズキも・・・と、かなり張りきって釣りしてました。

そんな中、なかなかの大物がヒットし、絶対に逃すまいとガチドラグで磯際の一番高い所に立ち格闘している最中、特大セット(高波)が押し寄せており、魚とのやり取りに夢中でその波に気付かず、為すすべ無く波にさらわれ、真冬の海に転落しました。

AM8時過ぎです。

ドラグガチガチで魚に引っ張られる力と、腰上まで登ってきた波にライジャケの浮力も加わり、身体が浮き上がって踏ん張ることも出来ず、一瞬で波に持っていかれました。

ライフジャケットを着ていたので、何とか浮いていることが出来ましたが、外洋に面した岬の先端のため潮流が早く、離岸流に乗ってあっという間に100m程沖まで流されてしまい、方向感覚も失いどうすることも出来ませんでした。
また、安物のライフジャケットだからか浮力が弱く、軽量でガリガリの僕でさえ顔がギリギリ出る程度でした。
体型が細身で体脂肪率が少ないので、体の浮力が低いためかもしれません。
顔に波がかぶりテンパりました。
ライフジャケットのポケットに入ってるジグとかプライヤーとか全て海に捨てて出来るだけ浮力を稼ぎました。なぜか浮くルアーまで全て捨ててしまいました。この日に限って、自作の1軍ルアーを沢山ポケットに詰め込んでおり、全て捨ててしまいました。

重い潮流の中でライフジャケットを着て濡れた衣服では水の抵抗も大きく、泳いでも全く進みません。出来るだけ体力を使わずに浮いていることしか出来ませんでした。

なぜか頭上には鳥が集っていました。

幸運にも、同じ磯にもう一人釣り人が居て、早々にレスキューを手配してくれました。その方は、ヨット部の経験などもあり、迅速な救助要請をしてくれました。

最近、万が一に備えてスマホを防水に変えていたのですが、転落直前にポケットから出して磯に置いてしまっていたので、自分で救助を呼ぶことも出来ず、あの方がいなければ絶対に助かってなかったです。

時間にして30分~40分浮いていたそうですが、後半はあまり記憶が無く、意識は朦朧としていたと思います。
海水は黒潮のお陰でかなり温かかったです。

海上では死への恐怖や苦しさというものはあまり感じず、記憶が消えているだけかもしれませんが、何より家族への申し訳なさと悔しさでいっぱいでした。何の前触れもなく突然やってきた最期の時、何のメッセージも残せず、家族を残してこんなところで絶対に死ねない、という気持ちでいっぱいでしたが、自分ではどうすることも出来ないもどかしさで無駄に叫んでいました。

意識はしっかり持っていたつもりなんですが、途中から記憶が完全に消失しているのがすごく不思議で怖いです。

真っ先に駆けつけてくれたのは、二人の地元の渡船業者の方。最初は浮き輪を投げてくれたらしく、僕が自分で浮き輪を掴んだらしいですが記憶がありません。そして、その渡船屋さんの一人が濡れて重たくなった僕を何とか海から引っ張り上げてくれて、「はしごに足かかるか!」と大きな声で声掛けをしてくれ、一瞬我にかえり、はしごに足を軽くかけて船上に倒れ込み、次に「家族の番号!」という声にまた反応し、とっさに奥さんの携帯番号を伝えました。視界がとても狭く感じました。助かった~と安堵し、すぐに気を失ってしまいました。レスキュー隊から家族のもとにもすぐに連絡をしてくれていました。

あの力強く温かい渡船屋さんの声は忘れられません。

記憶にはないですが、ずっと寒い寒いと訴えていたようで、港に到着するまで渡船屋さんの一人が身体をさすってくれたり、声掛けを続けてくれていたようです。

その後、救急隊に渡され、全裸にて処置をして頂いたようですが、なんと救急車の中で気化熱により低体温症に陥り心肺停止に。胸骨圧迫を30分間も続けてくださり、なんとか蘇生し一命を取り留めたとのことでした。
あの時助かったはずなのになんで!??と、後から聞いてびっくりしました。

最初に目を覚ましたときは全身金縛り状態で、うっすらと白く光った天井が見え、病院かな?全身麻痺かな?でも生きてるなと思って、またすぐに眠ってしまいました。なんとなく呼ばれたり触られているような感覚を覚えています。

そして次に目を覚ました時、全身に何かが繋がれている不快感と違和感を感じ、頑張れば体が動く事が分かりました。後から聞くと、人工心肺装置などに繋がれ、鎮静剤や麻酔により身体を動かせなかっただけのようです。そしてまた眠ってしまったようです。

そして、次に目を覚ました時は、体から管を抜かれている感覚の中、意識はしっかりとしており、身体も動かせることがわかりました。

自分では、まだ全身びしょ濡れの感覚で起きましたが、既に事故から3日も経っていました。眠っている間は高熱が続いていたらしいですが、自分ではわかりませんでした。

その後、集中治療室で治療して頂きましたが、今度は3日間眠れず眠剤も効かずでした。
眠ろうとすると、頭の中で「バチン!」と電気が弾けたような音が鳴り飛び起きました。

肺に海水が入って肺炎になっていたらしく、残るは主にその治療とのことだったので、自宅近くの病院に転院させてもらいようやく眠ることが出来ました。それからは回復も早く、早々に退院できました。

そして、事故後2週間ほどで仕事にも復帰できました。

すぐに、救助に関わってくださった皆さんのところへ家族でお礼回りに行きました。皆さん温かく、身内のように喜んでくださいました。

今は胸の痛みが少々と柄にもなく十円ハゲが出来たくらいで、生きているだけでありがたいです。もう会えないかもと覚悟した家族ともまた暮らしていけます。

今回、僕の救助に関わってくださった皆さんには感謝してもしきれません。自分はもとより家族が救われました。また、僕と連絡が取れないと心配し、自宅や和歌山の病院にまで駆けつけてくれた友人。本当に家族の支えになりました。

そして何より一番心配と苦労をかけた奥さんには本当に申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。愛しい子供たちを母に託し、何度も大阪と和歌山を往復したり泊まり込んだりして、ずっとそばに居てくれました。

母も仕事を一週間休み、子供たちの面倒をみてくれました。

僕が助かった要因を振り返ると、本当に奇跡の連続だったと思います。

  • 当日は、真冬にも関わらず黒潮の暖流が入り込み、水温が20度近くあったこと。
  • 偶然、もう一人の釣り人が現場に居合わせたこと。またその方が、元ヨット部だったこと。
  • 全身防水仕様の服装であったこと。(シマノのスパイクブーツ、防水ロング靴下、レインスーツなど)
  • 安物でもライフジャケットをしっかり締めて着ていたこと。
  • 自分の体重が軽く、安物のライフジャケットでも浮いていることが出来たこと。(逆に体脂肪率が低いために、十分な浮力を得られなかったのかもしれません。)
  • 渡船屋さんがすぐに動ける状態であったこと。
  • 救急車内で心肺停止したこと。
  • 病院からも医師がドクターカーで向かってくれていて、途中で合流し処置してくださったこと。
  • 煙草を吸っていなかったこと。
  • まだギリギリ若い?年齢であったこと。
  • 持病や風邪気味などでも無かったこと。 

などなど、本当に運が良かったです。

※全身防水仕様に関して言えば、「多少の波をかぶっても大丈夫」と、これが逆に無謀な行動にも繋がったのだと思います。

今、本当に現実の世界に居るのかと、生きているのが不思議に思うくらいです。

意識不明の間や心肺停止していた時の記憶は全くなく、苦しいとか辛いとかいう感覚もなく、死後の世界や三途の川なんかも全く見えませんでした。無意識で何の感覚も記憶もない、夢も見ず眠っている状態と同じような感覚です。

ほぼ死んだはずなんですが、その自覚もなく、あのまま死んでても本人は気付いてないと思うと怖いです。当然ですが、こんなに死を間近に感じたことはないです。

そして、幼い頃から30年近く釣りしてきましたが、どれだけリスキーな遊びをしてたんだろうと、比較的ビビリな性格の僕ですが、若い頃はもっと無謀なことしてたし、思い返せば何度も自分のみならず家族の身まで危険にさらしていたんだと思い知り、すごく反省しました。ここで頭を打たなければ、気付かなかった事が沢山あります。
もちろん、子供たちを連れて今回のような磯に行くことはありませんでしたが、自分が危険じゃないと思っていても、過信は禁物で、自然は予測不能で油断はできないんだとつくづく思いました。

残念なことに、これだけの事故を経験しても釣りバカは治らないようで、今後も釣りは続けたいと思っています。
正直、不謹慎ですが、入院中も「逃した魚はデカかったなぁ」等と考えてしまったり。
またあのポイントでリベンジしたいなぁとか思ったり。
これが釣りバカの怖いところです。

そして、今も海は大好きですし、アウトドアも大好きです。もちろん一人で危険な場所に行くことはもう絶対にしませんが、安全に穏やかに無理せず自然の中で遊べるようにお金もかけて工夫し、自分と家族の命を守る事についてもしっかり考えていこうと思います。

早速、車のタイヤも交換しました。

今回、多くの方々にご心配とご迷惑をお掛けし、本当に申し訳ございませんでした。
また、救助やサポートして下さった方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。こんな一言では言い表せないですが、本当にありがとうございました。

多くの人に優しくしてもらって、「優しくしてもらい癖」がつきそうですが、いつまでも甘えてられないので、ボチボチ気を引き締めて頑張って行こうと思います。
 
そして釣りを楽しむ皆様!僕みたいなもんが言うのは何ですが、先ずは安全第一で、どんな小場所でもライフジャケットは絶対に着用しておいた方が無難です!一見穏やかに見えても、何が起きるか分からないのが自然の怖さです。命を守る道具はケチらずある程度お金もかけて、自身の体型に合ったものを揃えてください! そして、ライフジャケットの各ベルト類はしっかり締めて、股紐もちゃんと締めて、点検も怠らないようにしないとです。

古くなったライフジャケットは買い替えをおすすめします!

磯ではウェーダーは危ないそうです!落水したら足が浮いてしまい、溺れるリスクが高くなるそうです。できればウェットスーツがベストです!

事前の海況予報、天気予報のチェック、当日の海の観察、足場の確保、万が一のことも想定し、対処法なども考えておいた方が良いです!

ガチドラグも危険です!よほど体力に自身のある人は別ですが、ある程度ドラグは出るように調整しておかないと、もし万が一、突然どデカイ魚に強烈に引っ張られたり、ひったくるようなバイトがあった時に、タイミングが悪いとバランスを崩し転倒したり、身体ごと持っていかれる恐れがあります。

携帯(スマホ)は防水仕様にして、回線はドコモなど海上でも電波の繋がるものじゃないとです!さらに防水ケース等に入れて首から下げるか、ライフジャケットに繋いでおく等しておいた方が安心かと思います。

あと、完全に一人の磯は避けた方が無難です!それか、アンカー打ってロープで身体を繋いでおくくらいした方が良いと思います。(エサ釣りの人でたまに見かけます。)

ちなみに、厄年とか興味なかったんですが、今年、僕は前厄に当たるそうです。

色んな方にアドバイスを受け、お祓いにも行ってみようと思います。

それと、今回の治療費ですが、本来であれば数百万円かかるところ、日本の健康保険制度(高額療養費 限度額適用認定証)の恩恵で10万円程度で済んだことにも驚きました。本当にありがたいことです。

と、そんなことがありましたが、特に性格も癖も趣味嗜好も変わっておりません。
ルアー製作もボチボチ再開し、もうちょっと身体も全快して、気候も暖かくなったらまた釣りにも行きたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い致します!!